Vol.22「“ともに – その1 – ”」西村 友宏さん

「友達をひろく持てるように。」僕の名前はそんなわけで友宏といいます。
姓は西村。
奈良で生まれ育ち、職業は漫画家・イラストレーターを名乗っています。
なぜこの仕事をしているのかと振り返ると、一番最初のきっかけは幼稚園に通う頃。
お隣りの家で留守番をしているとき、広告の裏になんとなく描いたお絵描きをその家のおばちゃんが見て
「あのな、そんな、顔から手が出たり足が出たりしてたらおかしいやろ。人間っていうのはな、顔があったら次は首や。ほんで肩があって腕があるんや。」と。
そこでヘソを曲げてペンを放り投げてしまう子もいるでしょうが、子供心に「なるほどなぁ。」と深く得心したのを覚えています。
おかげで次の日から幼稚園でお絵描きをしたら、先生から褒められる褒められる。
みんなのお父さんお母さんは首も体もないけれど、僕のはちゃんと人の形をしていますから。
絵を描いたら褒めてもらえる。
そう気付いたとき、僕のカラダに何気なく今に通じる種が蒔かれたのだな、と思います。
高校卒業後、漫画家を目指して上京し、その年に運良く全国誌でデビューします。
が、一年後には奈良に帰ってきていました。
自分の未熟さと経験不足で作品づくりがうまくいかず、独りぼっちの寂しさにも耐えきれなくなり逃げ帰ったのでした。
しかし漫画家という道を諦めたわけではなく、「これからは興味がなくても、面倒でも、知らないことには自分からどんどん首を突っ込んでいこう。」そう決めてますます漫画のためのネタ探しに捧げる日常を送るのでした。

友宏という名のおかげでしょうか、その頃から僕は友人に助けられっぱなしです。
大学にも行かず、就職もしていないフリーターの僕に酒を教えてくれたのは、地元で職人として働く幼なじみでした。
毎週のように飲み歩き、出不精だった僕をいろんなところに連れ出してくれました。
一人前の職人を目指し修行をする友人達の姿を見て、「早くこいつらに追いつかないと」と刺激を受けたり、また、行く先々で新たに出会う人達の憂いや喜びに触れ、この一見ろくでもない生活のそばに、これほどたくさんの素晴らしいドラマがあるのかと気付かされたりもしました。
それから一度の漫画誌掲載を経て、22歳のときにある新人漫画賞で大賞をいただきました。
賞金で部屋を借りてそこをアトリエにして、アルバイトをしながら執筆を続ける日々。
しかし目標とする連載には至りません。
しつこく漫画と向き合いますが、その壁を乗り越えられず、劣等と焦燥の中で鬱々と机に向かう生活が続きます。
25歳のとき、連載作品を決める選考に落ち、それ以降の作品づくりも進まず、はじめて「もう漫画家は無理だ。」とペンを置きました。
小学一年生の頃からずっと漫画家を目指して、そのためだけに生きてきたので、目標を自ら断った瞬間、どうやって生きて行けばいいのかまるでわからなくなりました。
唯一手にしていた頼りないけどずっと足下を照らしてくれていた灯りを吹き消してしまって、真っ暗な中、もう前にも進めず後ろにも退けず、ただただ立ち尽くすだけでした。
そんなとき、導き救い出してくれたのも、友人の一言です。

STUDIO IDU

モーニング 「ちばてつや賞」大賞受賞。ヤンマガ月間新人漫画賞入選。月間バスケットボールにて「ブルーナイツ」連載中。
漫画制作の他、オリジナルキャラクター制作や、ロゴ制作、似顔絵制作など、幅広く活躍中。 かわいいキャラクターからスタイリッシュなロゴまで、コンセプトやニーズに合ったイラストが好評。
http://idu23.com/

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